星にならなかった河童 第三章 人数の合わない年
板谷みきょう

その年、
帳面の人数が合わなかった。

一人、多いようでもあり、
一人、少ないようでもあった。

誰も慌てなかった。

数え直せば、“誰の名”を
呼ばなければならないか
分かってしまうからだ。

帳面は閉じられた。

人数が“合わないこと”は、
なぜか村に安堵をもたらした。

空白のページには、
誰かがこぼした“黒い油の染み”が、
じわりと広がっていた。

今年も、川は川のままだ。

そう言い聞かせるように、
染みは少しずつ大きくなっていった。

その染みは、拭えば消えたが、
誰も布を持ってこなかった。


散文(批評随筆小説等) 星にならなかった河童 第三章 人数の合わない年 Copyright 板谷みきょう 2026-01-31 11:04:12
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
童話モドキ