迷いの森について
夏井椋也


ほんの薄皮一枚で
世間と隔てられている
私の中の迷いの森では

樹々は喜びにさざめき
鳥は哀しみをさえずり
花は悩ましさをささやく

誰も見ることができない
私の中の迷いの森の
何処にも行けない小道には

焦げた詩の欠片と
錆びついたメタファーが
ふたつみっつ落ちている

私の中の迷いの森の
あまり隠していない出入口を
見つけてしまった者は

私のことを見切ったように
お花畑の管理人だとか
胃下垂のペシミストだとか

好き勝手に言うけれど
私の正体を言い当てたものは
残念ながら誰ひとりいない

私はただの迷いの森のオーナー
本当の私らしさなんて
私を知る者の数だけある




自由詩 迷いの森について Copyright 夏井椋也 2026-01-30 11:08:31
notebook Home