迷いの森について
夏井椋也
ほんの薄皮一枚で
世間と隔てられている
私の中の迷いの森では
樹々は喜びにさざめき
鳥は哀しみをさえずり
花は悩ましさをささやく
誰も見ることができない
私の中の迷いの森の
何処にも行けない小道には
焦げた詩の欠片と
錆びついたメタファーが
ふたつみっつ落ちている
私の中の迷いの森の
あまり隠していない出入口を
見つけてしまった者は
私のことを見切ったように
お花畑の管理人だとか
胃下垂のペシミストだとか
好き勝手に言うけれど
私の正体を言い当てたものは
残念ながら誰ひとりいない
私はただの迷いの森のオーナー
本当の私らしさなんて
私を知る者の数だけある