捜月
りつ

月が行方不明になったから
月を捜して彷徨った

夜の海では夜光虫が瞬たき
青く発火していたけれど
月はいなかった
枯れ野で風に訪ねても
実態のない躯をうねらせて
けたたましく笑いながら去ってゆく
高い塔から
雲に行方を問い質しても
沈黙の聲が谺するだけ
星たちは
賑やかに唄を奏でていたが
だれも月がどこに行ったか知らなかった

 月がいなければ
 生きてゆけない
 いつもの優しいメロディで
 うつくしことを騙ってよ
 幼子みたいに安心しきって
 容易く眠りに落ちるから

月がいない
絶望とは渇いた苦い哀しみだと知らなかった
日々は無邪気にずっと続くと信じて
嘆きの意味など知らないまま
老いて土に還るのだと疑わなかった

永遠の夜をさ迷いながら
わたしは無明を数えている
月を捜し続けている
この呼吸が終わるまで
心臓の最期の一打ちまで


自由詩 捜月 Copyright りつ 2026-01-13 21:56:48
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