詩誌を終活する
たま

 私が所属する同人誌は一九七七年の創刊です。誌名は『新怪魚』といいます。
 私が入会したのは三二才、『新怪魚一〇号』からです。その『新怪魚』は、昨年暮れに一五六号を発行してます。
 私は創立会員ではありませんが、五〇号からグループの代表に推されて、そのまま編集発行の責任者として今年を迎えます。最盛期には五〇名を超える会員がいて、発行部数一五〇部の季刊誌でしたが、今は年二回の発行となりました。会員は一〇名ほどです。
 私が入会してからでも四〇年あまりになります。入会当時の会員は、ほとんど亡くなりました。戦後の現代詩ブームを体験した骨太の先輩がたくさんいました。
 昨年、私は『新怪魚』の「終活」を宣言しました。
 あと二年、一六〇号が終刊号となります。その理由は「同人の皆さんがお元気な内に『新怪魚』の最後を見届けたい」というものです。ほとんど私の独断でしたが、会員の皆さんは賛同してくれました。
 このまま、じり貧になって消えてゆくのは嫌だったのです。いつかは終わる同人誌です。突然音信不通になって、消えてしまう同人誌を見てきたから、それだけは避けたかったのです。
 心配は終刊後の同人の皆さんの詩作です。私自身はもう同人誌活動はしません。個人誌もやりません。『新怪魚』以外に発表の場がある同人は、構わないのですが、発表の場がない同人が二名ほどいて、私はいまその二名の就職活動のお世話というか、親しい同人誌への入会を勧めています。
 私はなんとかネットと繋がっていますが、紙媒体しか知らない同人はやはり、同人誌でなければ書きつづけることが出来ないのです。
 詩誌の終活なんてあまり耳にしませんが、いつか同人誌としての使命を終える時が必ず来ます。その同人誌に拾われて育てられたのが私です。『新怪魚』への最後のご恩返しをしなければと思うのです。
 しかし、詩誌はいったいどこへゆくのでしょうか。こうして詩誌を手放そうとしている私は、今、なにひとつ語るべきものはありません。その事実を正直に言い残しておきたいと思います。
 私にとって同人誌『新怪魚』とは、海に沈められた路面電車のようなもの、つまり、魚礁だったのです。





散文(批評随筆小説等) 詩誌を終活する Copyright たま 2026-01-07 09:26:09
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