夜にせきたてられて
室町 礼
夜にせきたてられて
駅を追われて見る一筆書きのような
街の風景
「あんたさあ、どうして身投げしねえの?」
不意に声をかけられたことがある
「知らねえよ、そんなの」
ロボットが舞台から降りることなんかできるか
脚にガタがきて
肺がやられているとしても
二十四時間神さまのオモチャになるのさ
おれは
陸の橋の欄干にもたれて
だれかに火を貸してもらうために
拾った吸い殻をポケットから出した
くの字に折れた"タンベ"を
咥えた
"タンベ ハナ チュセヨ"
そんなことをいつもいっていた
朝鮮部落の不良中学生がいたな
そういいながら
もう生きるのはイヤだ
もう生きるのはイヤだ
と金魚鉢の金魚に煙を吐いていた
だれもいないから話し相手もみつからないので
タバコを投げる
「死ぬなら思い切り周囲に迷惑をかけて
死にてえな」
だれにも知られずに死ぬなんて
少し いやだ
ケツの穴に打ち上げ花火をともし
日の丸の旗のマントをまとい
いやっほー
ビルの際に立って
アルゼンチンタンゴを踊る
そして
足をすべらせて落下するのだ
ガムを二度噛むヒマがあるだろうか
十分いや二日くらいは
ツィッターの話題に
なるかもしれない
それくらい派手に死んでも
わずか二日が精一杯ってところか
暗闇に沈む駅のほうをみると
影絵のように人が群れている
あーあー
核戦争おこんねえかな
きれいさっぱり核戦争おこんねえかな
もう左脚もいかれて
肺もいかれているのに戦争祈願して
核でこの国が滅亡するのを想像すると
不意にむらむらとチンポが勃ってきた