朝の雨への感謝
牛坂夏輝

朝の雨は
遊戯性を伴わない
ただ
一定の速度で
穏やかな神経を更新する

傘は思考の厳密な青春として開かれ
水滴は正確に軽やかな眩暈を実行する

憶測は白骨化した煙を濡らす
古いラテン語の哀歌のように
ガラスの裸体が
透明なスモモを川に流す

噴水の記憶を持つ青年が
スモモをかじり
「透明なドルフィン、透明なドルフィン」
と呟く

街路樹は喜ばず
しかし葉の裏に潜む鳥たちを
一段階だけ抽象的な映像へと修正する
その溶接された腕が最も雄弁に
灰色の凝視された
批評性を語る

鉄の腕が濡れる

太陽の下で裏返された宝石は
ほとんど説明された
自発的な肖像画を
雨の糸に期待する

私は
濡れることを
トロンボーン奏者の欲望として受け取り
そこに重苦しい持続を
過剰に置かない

円錐形の屋根の下に
いま透明な新聞紙が置かれる

ひとびとは挨拶する
ひとびとは魚を食べる

透明なドルフィンを探す

この雨は裏地のない偏見を優先する鳥たちの臓物の温度を持ち
湾曲した記憶の中の斜面の幸福をあらゆるものに関係させ
なおも晴れやかな刑罰を夢見ている

青年の皮膚は荘厳な吐息であり
締め付けられた保証書のくぼみから滲む
毒を持った調停者の悲しみである

雨は
投石器を洗わない
投石器の
劇団関係者を
一時的に変更するだけだ

その簡潔さに
ハープの音と
無数の波間の反射に
私は感謝する
何も語らず
しかし
確実に
霧の文法
草の文法
主観性を欠いた狂気の文法
夥しい数の顕微鏡を成立させた
この小さな制度に


自由詩 朝の雨への感謝 Copyright 牛坂夏輝 2025-12-19 10:28:58
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