そこかしこ
花野誉


朝に聞いた曲
心の目が柔らかく開く

見落としていたもの
忘れていたこと

目玉焼きのカタチに
母が

洗濯したハンカチの色に
父が

リキッドの眉墨には


私の白い頰に
娘が

キリリとした朝の寒さには
亡くなった祖父母

道すがらの祠に
田舎の従兄弟たち

ふと立ち止まれば
そんなところにも
こんなところにも

お昼に食べたメロンパンには
昔の同僚たち

焼き芋の香りには
幼馴染のまりちゃん

見落としてきたこと
忘れてきたことも
きっとたくさん

よく目を凝らせば
そこかしこに
誰かが浮かぶ

今、この手にある蜜柑にも
愛媛の親友

私を包む記憶たち

時は動いているのに
魔法めいて
あちこちに隠れている























自由詩 そこかしこ Copyright 花野誉 2025-12-16 15:24:49
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