抒情詩について
牛坂夏輝
最も遠い牡牛を見に行こう
インゲン豆の思想を持って
白鳥の内面を持って
大地の虫歯
お茶の先端に刺さる深く静かな悲しみ
誠実な熟読と
ヤマウズラの貞節な唾液を持って
今朝はグリーグの「二つの悲しい旋律」を聴いたのだ
修道院で種子を食べて
透明な微笑みのように彷徨って
「これから抒情詩を書きます」
と宣言しよう
水飲み場が目覚め
空中で叫ぶ挽き肉が目覚め
ブドウとトンネルの婚礼が目覚め
不毛な物思いが目覚める
迷路を予測し血統主義の強く残る仕事をし
木蔦に蜜蜂を留まらせてあげよう
壺の中のカスミソウ
その不可解な冷酷さ
その不可解な太陽系への執着
「みんなで抒情詩を書こう。馥郁たる豚の形式で、
それを恐れないミモザの精神を持って」
語るのは視床下部の青年だった
彼の股関節は煙をあげ
彼の尊大な草原の物語は放棄された
「悲しい二つの旋律」は
いつの間にか始まり
いつの間にか終わっていた
最も遠い牡牛を見に行こう
牡牛は
記憶喪失の泉に浮かぶ
効果的な煉獄を痙攣させて
「自由と現実」についての小説を書くだろう
それは散文ではあるが
命令された犯罪者たちの
素敵な散歩でもあるようだ
安らかに遠ざかる夜の岩肌
黒いコーヒーのしずけさ
長椅子の上で抒情詩を書く
頭の中には
ひとつの草の想い出だけがあった