あの子へ
道草次郎
「富士山」
どんな山も
どうやら富士山らしい
そんな時
わたしは何かの力に押されるように
静かにほほえむだろう
ほほえみながら
この
ほほえみのことを考え
どんぐりの木の下で
いつまでも
どこまでも
地球のまるみを感じていたい
「ギッコンバッタン」
ギッコンバッタン
をしようといい
ギッコンバッタンを
する
そっと腰をおろさないと
あの子が不安がる
ので
わたしは
そーっとゆっくりと
体重をかけていく
あの
日曜日の午後
おまえ
おまえは
それだけ
たったそれだけの
日曜日の午後の
ひとときで
いておくれよ
いつまでも
「月夜」
ダメなやつ、とか
自分へいうのはよくないのです
でも
わたしはたくさん
自分へいってきたし
いまも
いっている
「おとうさんはね
こんな人なんだよ」
そう言えたら
ずいぶん楽だろうなあ
とふとおもうけれど
あと何年かすれば
あの子は
わたしのふと笑った顔で
そのとおりの言葉を
聞くに
ちがいないのです
あの子が
わたしをきらい
そして
そのきらいを
みらいのじぶんへそれとなく預ける晩などが
きっと
来るんだろうと思います
その晩が
どうかきれいな月夜の晩で
ありますように
そのように
わたしは願います