冬の散歩道
夏井椋也
暗渠の上の緑道を歩く
枯葉を踏みながら
自分の影を踏みながら
何処も目指さずに
誰も目指さずに
曲がりくねった道を彷徨う
陽射しはただ微笑むだけで
空の青さが背筋に染みる
あなたはただ微笑んだだけで
わたしのことが好きだったわけではない
後退りしながら前へ進む
いきなり切りつけてくる北風に
ポケットの中の温もりを握り締める
守ろうとして守り切れなかったものが
いったいいくつあっただろう
あっという間にやってくる土曜日を歩く
時よ そこを歩いている時よ
いつも背中しか見せない時よ
たまには呆けたふりをして
冬の散歩道を一緒に歩いてくれないか