冬の散歩道
夏井椋也


暗渠の上の緑道を歩く

枯葉を踏みながら
自分の影を踏みながら
何処も目指さずに
誰も目指さずに

曲がりくねった道を彷徨う

陽射しはただ微笑むだけで
空の青さが背筋に染みる
あなたはただ微笑んだだけで
わたしのことが好きだったわけではない

後退りしながら前へ進む

いきなり切りつけてくる北風に
ポケットの中の温もりを握り締める
守ろうとして守り切れなかったものが
いったいいくつあっただろう

あっという間にやってくる土曜日を歩く

時よ そこを歩いている時よ
いつも背中しか見せない時よ
たまには呆けたふりをして
冬の散歩道を一緒に歩いてくれないか




自由詩 冬の散歩道 Copyright 夏井椋也 2025-12-14 11:19:49
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