にんげんばんじだれのなに?
秋葉竹



何年もまえから
週末になると三時間ほどかけて
家に帰っている

はじめのころは
半分くらい旅行している感覚で
ぶっちゃけ云うと
けっこうしんどかったな

だから
二週に一回とかにしていた

でもまぁ
慣れというのは恐ろしいもので
いまではさほどの苦痛も感じず
毎週末車の運転をしている
帰りは夜なので
ドライブという感じじゃないが
たまに
夜だからこその
感動的な目に出会えたりする



数年走っている道が
ずっと工事中だったのだが
そのうちできるんだろうなくらいの
感覚でしか
その工事をみていなかった

先週
工事が完成して
高速みたいなバイパスみたいな
車専用の道路が
今まで以上に伸びていた
わたしにはまったく関係ないけど
そこに住むひとたちには
いいことに違いないとは想う

ただわたしにも少しだけ関係ができたのは
先週
夜にその道を走りながら
新しい道路が完成した事実を知らずに
信号もない
終点で降りさえすればいい道路を
普通に走っていた
その先に道はないから
道なりに走っていれば
その道はわたしを降ろしてくれるはず

だった

むろんみなさまのご想像どおりさ

今までならその先に道がないから
降ろしてくれていた降り口が
なんの合図もしてくれないから
左に降りられずに
直進してしまった

瞬間
気はついたよ

でもバックで戻れないじゃない?

そのまま進むしかないよね



次の降り口までが
長い長いながぁーい道のりなのさ

で、降りて

もと来た道に戻ろうと
その高架道路に乗り直し
(乗り直すのにさえ
大いに迷ったのだけど真っ暗な田舎道)
また
ながぁーい道のりを走りつづけど
走りつづけど
降り口がない

まえからいつも使っていた
昇り口を昇ったあとの景色だと
あたりの景色をながめて気づいたとき
あの降り口と対の
反対側の降り口はないのだとも気づいた

な、なんてよるだ


あたりまえだけど
その次の降り口で降りて
そこは昇り口があったので
グルリと車をそちらへ回して
その昇り口から昇り
いつもの降り口で

むろん、無事、降りられました


なぁーんてことがあるから
最初のほうで云ってたでしょ?
いつもの道だって
たまに感動的な目に出会えたりする


そしてそれが理由かどうかわからないが
一度
訳のわからない降り口で降ろされたときに
ナビで家への帰り道を教えてもらってて
そのナビそのままで車を走らせてたら
数年かよいなれた道だけど
ナビがいつもと違う案内しやがるもんだから
どうせ時間も遅れに遅れてるし
まぁ急ぐ旅でもないんだしと
ナビどおりに進んでみたんだ

すると全国でもけっこう有名な
なんと温泉街を突き抜けて
家に帰る道をナビしやがるんだ

ポ、ポンコツか、このナビ

でもまぁ結果的にはそれほど大きな
時間の差もなく
無事に家へ帰らせてくれたから
ポンコツ発言は取り消してやってもいいぜ



なにを云いたいかと云えば
《感動的な体験》というのも
ほんとうに負け惜しみなんかじゃなくて
まだ人生の途中だけど
その日いちにちのなかで
人間万事塞翁が馬
だよなぁ

古人の格言に激しく同意したって
はなしを
したかったのさ










自由詩 にんげんばんじだれのなに? Copyright 秋葉竹 2025-12-13 10:05:11
notebook Home