冬の猫
そらの珊瑚

日、いちにちと
冬のけはいが濃くなり
きのうより
はやくなった夕暮れ
人はみんな
もうこれ以上は失われまいとして足早になる

冷気はあしもとからやってきて
なにかによばれたような気がして
立ち止まると
やがて
懐かしい猫もやってくる
さみしい、なんて鳴かない
おまえは世界でいちばん強い猫

一番星を見つけよう
ねがいごとなんてもうしない
おまえはきっとしあわせだった

得たものは
あまねく失われていくけれど
失ったものは
やがて
おかえり
ただいま
言葉の代わりに
猫の鈴が耳の奥でちりんと鳴った






自由詩 冬の猫 Copyright そらの珊瑚 2025-12-10 21:44:22
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