冬の猫
そらの珊瑚
日、いちにちと
冬のけはいが濃くなり
きのうより
はやくなった夕暮れ
人はみんな
もうこれ以上は失われまいとして足早になる
冷気はあしもとからやってきて
なにかによばれたような気がして
立ち止まると
やがて
懐かしい猫もやってくる
さみしい、なんて鳴かない
おまえは世界でいちばん強い猫
一番星を見つけよう
ねがいごとなんてもうしない
おまえはきっとしあわせだった
得たものは
あまねく失われていくけれど
失ったものは
やがて
おかえり
ただいま
言葉の代わりに
猫の鈴が耳の奥でちりんと鳴った