午後とけだもの
木立 悟





失われたのか
無かったのか
どこまでもつづく橋桁
どこまでつづく鳥と波


蒲公英の種子の空
隙間から降る宇宙の午後
誰も居ない径に
部屋に積もる


何処からか涙が
岩の震えと共に来て
岩を跨ぐ鉄に散り
水紋となり海に向かう


誰が悲しみ 誰が咬むのか
沈む街を見る時計
砂をゆくけだものの背から尾から
色は剥がれ 足跡に積もる


水の底の蝶の群れ
蟻の影を歩みゆく
半ば凍った窓に映る
光と冬と消えゆく歌


羽の声 銀の河
越えては溺れ越えては溺れ
鉄の糸 搊く音
午後に睡るけだものに会う


頭も身体も冷えすぎた
河は温かく流れつづけ
常に暗い曇を映す
尽きることのない宇宙の午後に





















自由詩 午後とけだもの Copyright 木立 悟 2025-12-09 22:30:27
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