花束
りつ

たんほぽの
綿毛がふわりと
飛んだような感触があれば
思い出してほしい
遠くに住んでいるあなたに
ひとめ逢いたかったのだと

カスミソウの
儚い面影があれば
足を止めてほしい
他人様の
引き立て役になるしかない私でも
秘かにあなたが好きだったのだと

鈴蘭の香りが
擦れ違ったら
振り向いてほしい
毒花だけれど
可愛い一途な想いがあったのだと

秋桜が
ゆらゆら風に揺れていたら
無視してほしい
結局は
ご縁が無かったのだ
それだけのこと

朝な夕なに四季折々の
花は咲き乱れ
咲き誇り
華やかな花に満ち溢れた世界では
カタバミやシロツメグサなどの
野に咲く花は
見過ごされ
愛でられもせず
枯れてゆく

それでいい

あなたには
大輪の
美しい花が
よく似合う


自由詩 花束 Copyright りつ 2025-12-09 22:27:22
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