シミ
花野誉

娘と話した夜
相談にのっているうち
白熱し過ぎた

彼女の心を
置き去りにしたことを
謝罪する

彼女は私ではない
私の轍を踏むと
見当違いも甚だしい

それがきっかけ──

湯船に浸かりながら
ふと
過去の私と今の私を繋いでいた

もう過ぎたことと
決めたこと

それは
今では模様となった
絨毯のシミのよう

シミの理由を見つめるのは
心地良くない

髪を乾かしながら
目が赤くなる
濡れた顔に涙は流れない

──まだ、許していないのか

あの時の私が
声を出さず俯いている

こんなに月日が経っても、
そこにいて
私は一人ぼっちなのだと、
ちゃんと分かっている
暈していたのに

そのシミを模様だと
いつも、
そうしているから
波風は立たない

今更立てる
波風じゃなし

見つめてしまった時
湧き上がるものに
毎度、胸が痛む

そして
そこにいる私に会っても
何もしてやれない
ただ
見つめるのみ

さてと、
髪も乾いた
晩ごはんの支度をせねば




















自由詩 シミ Copyright 花野誉 2025-12-08 22:38:51
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