林檎、あるいは生贄の友達
牛坂夏輝

林檎の内部には
乾いた正常な絶望があり
その鏡の
理想化された煙の海辺で
きみの通過できない空間が
雨に熱狂的な暗示を加えている

雨は吟味された言葉の正義と連続性
そして消費された壮麗な顎たちの歴史を振り返る

歴史は田園に加入した鸚鵡の寓話である

ぼくが触れると
林檎は即座に
白い穿頭術の劇場へと変わり
音のない完璧な地層では
きみの永久歯が
処刑の遍歴を続けている

たとえば寓話の内面に二人の毛深い英雄がいる

彼らには不条理な
裸体のような闇が見えないため
乱入する大理石の村人
侮辱された隠者の窓枠などに
あらがう術が一切ない
そのような場合には
この亜麻色の犬たち
この記憶と青ざめた聖なるタコたちへの
最も論理的な賛辞を
考えなければならないだろう

論理は常に愚弄された誠実な称賛を必要とする

友達よ
きみの鋭角的な汗をともなう肉体労働は
ときに
活発な虚無の中央で倒れた
平原の雲雀のように
不可視の臆病な熾火に
そっと引き上げられる

その動きが
ぼくの制定された障害物の奥に
一枚の光の地下道の写真を張る

四角い狂気
褐色の炎
か弱い不安のための薄い膜
天使は骸骨の芸術を愛する

活発な虚無のように最前列で透明化した
ウサギの心臓の中の羽毛の夢のような
疾駆する音響

それは何も語ることのない瞼である

水と沈黙の交尾する階段を
きみが下りるたび
ぼくの反抗的な過干渉は
青いポプラの並木や
山脈の死を露呈し
林檎の両目は
幼少期の顔と
荒廃したガラスの原野のあいだで揺れる

大きくなっていく不滅

それは揺れ動き
待ち伏せされた知性の雨の朝のように
感傷的な口づけを許さない

断面は藁でできている
それは不穏な噴水を馬たちに与える

聞きなさい
腐敗した間奏曲と
広がっていく崇高な梟の腹部は
誰よりも静謐さを信じ
その静けさは
ぼくらの錆びついた計略の
唯一の信頼された照明器具である

馬たちは映画を見ながら妄想し
太陽に最も近い盲目の先端で錯乱し
ひとつの紫色の鏡の内部で静かに爆発する

透過された地図の見方を学ぶ日々

生贄であっても
きみが放棄された斑点を探すと
世界で繰り返される野営地の眺望は
透明な演出家の
陰茎のように
ふたたび古い孤独の動作を示す
ぼくらは
その残骸の上を歩く蛇の腹の中の石だ

明示された歴史書の目覚めたトーストの皮膚を
移植された集団が呼びかける

「光は美しい恐怖の芸術を、光は肉と毛深い二人の英雄の悲惨で猥褻的な肘掛け椅子の苦しみを、光はこの長い黙示録的な幻覚の内部構造を規則正しい議事録作成者として、穏やかな皮肉とともに、神経質な脊椎を示唆し続けて来た」

いずれ
落下の瞬間に
林檎は
深い水の調律師へと変容し
ぼくらの星の骨組みに
優雅な金属を閉じ込めて
爪を立てるだろう
それが成長していく渇きに対しての
唯一の契約なのだ


自由詩 林檎、あるいは生贄の友達 Copyright 牛坂夏輝 2025-12-08 08:25:58
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