ブブンヤキソバ
たもつ
わたしたち、幼い風に吹かれて
食べている(食べている)
ブブンヤキソバ
わたしたちは全部ではないから
いつまでたっても部分だから
ブブンヤキソバばかり
食べているの(食べているの)
この麺は (ブブン)
このお肉は (ブブン)
このキャベツは (ブブン)
広がっていく (ブブン)
狭まっていく (ゼンブ)
宇宙のどこか片隅に
厨房があるんだってね
そこではゼンブヤキソバが
調理されているんだってね
あなたが夕べ
寝言でそう言っていた
その宇宙は
千葉県長生郡にあるんだってね
名物のゼンブヤキソバは
絶品なんだってね
わたしが夕べ
寝言でそう言っていた(らしいね)
いつまでも見つからない全部を探して
ブブンヤキソバを食べる
細い顎をしたわたしたちはそれでも
ブブンブブンをよく噛んで食べる
部分がいくら増えても
全部にはならない
そんなことは知っているのに
部分ばかり集めてしまう
(集めてしまうの)
雨が降り始める
雨音を聞くために
今のわたしたちの身体はある
見たことはないけれど
全部の真似事をしてみる
たとえ間違っていても
こうしてわたしたち
幸せで良かった
(出会えて良かった)