僕タチハ、ミンナ森ニイル。
田中宏輔2
ヘミングウェイが入ってきた。
(レイモンド・チャンドラー『さらば愛しき女よ』32、清水俊二訳)
元気そうじゃないか。
(チャールズ・ウェッブ『卒業』1、佐和 誠訳、句点加筆)
プルーストは
(コクトー『阿片』堀口大學訳)
いつものきまりの席で、原稿を書いているところだった。
(ボリス・ヴィアン『日々の泡』56、曾根元吉訳)
君がよく引用した文句は何だったっけ?
(ソルジェニーツィン『煉獄のなかで』14、木村 浩・松永緑彌訳)
ひとは他人の経験からなにも学びはしない。
(エリオット『寺院の殺人』第一部、福田恆存訳)
いや、まったく同感だ。──さしあたりはね。
(コレット『牝猫』工藤庸子訳、読点及び句点加筆)
まさに詩人のいうとおりだ。
(グレン・ヴェイジー『選択』夏来健次訳)
しかし、このことをほんとうに信じ、実際そうだと思うのは難しいね。
(ホーフマンスタール『詩についての対話』富士川英郎訳)
コーヒーが運ばれてきた。
(トーマス・マン『ブッデンブローグ家の人びと』第一部・第八章、望月市恵訳)
そうだ、
(原 民喜『心願の国』)
君はどう思う、戦争なんてものも、いい思い出になるものなのかな?
(ソルジェニーツィン『煉獄のなかで』7、木村 浩・松永緑彌訳、読点加筆)
どうかしてるよ、
(コクトー『怖るべき子供たち』一、東郷青児訳)
アーネスト。
(ワイルド『まじめが肝心』第二幕、西村孝次訳)
戦争がいいなんていえるのは、
(ソルジェニーツィン『煉獄のなかで』7、木村 浩・松永緑彌訳)
気が狂っている。
(使徒行伝二六・二四)
なんだよ、そのいいがかりは?
(ハーラン・エリスン『ガラスの小鬼が砕けるように』伊藤典夫訳)
まあいいさ。
(ジュリアス・レスター『すばらしいバスケットボール』第一部・1、石井清子訳)
で、これからどうするんだ?
(ギュンター・グラス『猫と鼠』XIII、高本研一訳)
道楽者のアーネストは、どうするつもりだい?
(ワイルド『まじめが肝心』第一幕、西村孝次訳)
あ、
(ジョン・ダン『遺贈』篠田綾子訳)
そうだ。
(ミラン・クンデラ『ジャックとその主人』第一幕・第五場、近藤真理訳)
ブーローニュの森へ散歩に行ってみたら?
(ボリス・ヴィアン『日々の泡』13、曾根元吉訳、疑問符加筆)
気に入ったことを言うじゃないか。
(モリエール『人間ぎらい』第三幕・第一場、内藤 濯訳)
ポケットには、何がはいっている?
(ソルジェニーツィン『煉獄のなかで』32、木村 浩・松永緑彌訳、読点加筆)
ヘミングウェイは嬉しそうに笑って見せた。
(レイモンド・チャンドラー『さらば愛しき女よ』33、清水俊二訳)
そこには
(ハーラン・エリスン『満員御礼』浅倉久志訳)
コンドームの包みがあったからである。
(ギュンター・グラス『猫と鼠』VII、高本研一訳、句点加筆)
二人は
(ラーゲルクヴィスト『バラバ』尾崎 義訳)
少し離れたバスの停留所へ向かった。
(カミュ『異邦人』第一部・5、窪田啓作訳)
バス停には、ごたごたと行列がいくつも並んでいた。
(ソルジェニーツィン『煉獄のなかで』34、木村 浩・松永緑彌訳、読点加筆)
うしろで、もそもそやってるのは、だれの禿頭だ?
(ソルジェニーツィン『煉獄のなかで』7、木村 浩・松永緑彌訳、読点加筆)
そう言いながら、
(サリンジャー『フラニーとゾーイー』フラニー、野崎 孝訳)
ヘミングウェイはポケットからハンケチを出して、顔を拭いた。
(レイモンド・チャンドラー『さらば愛しき女よ』33、清水俊二訳)
バスがやってきて、彼の前でドアがあいた。
(トム・リーミイ『サンディエゴ・ライトフット・スー』井辻朱美訳)
マルセルは
(バタイユ『眼球譚』第一部・物語・衣装箪笥、生田耕作訳)
そのハンケチほど汚いハンケチをみたことがなかった。
(レイモンド・チャンドラー『さらば愛しき女よ』5、清水俊二訳)
それ以来、幾年かが流れすぎた。
(シュトルム『大学時代』大学にて、高橋義孝訳、読点加筆)
さて、そのハンカチは、いまどこにあるだろう?
(ソルジェニーツィン『煉獄のなかで』84、木村 浩・松永緑彌訳、読点加筆)
ありあまるほどの平和。
(ハーラン・エリスン『眠れ、安らかに』浅倉久志訳)
自殺がいっぱい。
(ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』25、井上 勇訳、句点加筆)
自殺が。
(三島由紀夫『禁色』第四章、句点加筆)
僕タチハ、ミンナ森ニイル。
(G・ヤノーホ『カフカとの対話』吉田仙太郎訳、読点加筆)
僕タチハ、ミンナ森ニイル。
(G・ヤノーホ『カフカとの対話』吉田仙太郎訳、読点加筆)