幕を下ろす
本田憲嵩

下ろしかけていた自動シャッターのボタンをまた上げる方に押す。シロップ漬けのサクランボのような紅色をしたまあるい巨星。とても大きく膨らんだ夕日がシャッター先のひくい夕空に浮かんでいる。しばしのあいだ魅入っている。いつだってものごとの始まりと終わりはとりわけ格別なもの。「ごきげんよう、また朝日(あした)」。上まで上げきっていた自動シャッターのボタンをまた下げる方に押す。シャッターを下ろして今日という日の勤務の幕を下ろす。



自由詩 幕を下ろす Copyright 本田憲嵩 2025-11-30 23:44:40
notebook Home