ランドン
牛坂夏輝

ランドンは三〇年前に植物の精神を両肺に移植し、
それ以降は羊たちと目を合わせることがない。

「どうして、ランドンは、サンドイッチに魚を入れないの?」

不可解なのは、
ランドンが便座を
すぐに殴って破壊することだ。
支離滅裂な鏡は破壊され、
イチジクの発言はことごとく無視された。

ランドンが落下する。
それはキンモクセイが満開になった夜のことだった。

夜の木は素早い煙のようにして、
廃墟に口づけする。

急がないで。讃歌は、いくつもの恋と、トカゲと、調律師を、
乾いた脳を横断する臨時的なこのモダニズムに、
接続してきた。

五年から三〇〇〇年の間だったような。

「どうして、ランドンは、ソーセージに、
ハチミツをたくさん塗らないの?」

鳴り響くサイレンに、
契約したと主張する恋人たちは、
この波間、
あるいはこの武器庫の火になり得る誕生日も、
いつかはランドンのようになるのだと、
偽りの声を用いながら
話した。

石灰の激怒に青ざめる義務、
お気に入りの空、
エーデルワイスのような他者の飢餓、
どうして
本質的な恐怖以前の議論を、
支配者の小径が
求めるのか。

村の人はランドンの靴しか見たことがない。
雨の皮膚を剥いで作った、特別な靴だった。

不可解。

「どうして、ランドンは生まれる前の体毛を、
美しい少年の昼間の類型的な真実を、
骨をしゃぶりながら、
凝視し続けるの?」

ランドンは一〇〇年前に死んだ。
遠い雷を聞いて、
その瞬間、一匹の黒焦げの犬になっていた。

ランドンは、ハイドンの交響曲を部屋で聴く。
彼の目、
彼の引き攣る習慣。

一〇〇〇年前のランドンは、いまよりも少しだけ
饒舌だった。

「どうして、ランドンはミニトマトと対談しないの?」

以上が、ランドンの人生の物語だ。
ぼくは、鉛筆にオイスターソースをかける。



自由詩 ランドン Copyright 牛坂夏輝 2025-11-30 15:09:54
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