他人の自画像
イオン

絵画は脳裏に詩を紡ぐ
詩歌は脳裏に絵を紡ぐ

画家の石田徹也は
自分の絵を「他人の自画像」だと語った
彼の絵を見た私は
自分の詩も「他人の自画像」だと思った

自分の本当の姿は直視できない
鏡や画像でしか見れない以上
他人を通しての自画像しか描けない

彼は三十一歳で早世し
没後に出世した
早世してから注目された
中原中也や宮沢賢治のようだ

絵具を買うために生活を切り詰める
つき合っていた恋人とも
「幸せすぎて、絵が描けない」と別れたと言う
情けない自分を皮肉った
ちょっと怖い自画像が
鑑賞品として売れるとは思えないが
それしか描けなかったゆえに貧しく
その貧しさがエネルギーとなるサイクルから
神がもう十分だと思って召し上げたのだろう

彼の作品は総じて大きい
フィクションにリアリティを出すために
緻密に描きたかったのだろう
でもA4サイズの大きさで
机に仕舞って哀しくなる度に取り出せる
私事の大きさであれば売れたと思うが
俗物的な生き方を拒んだからこそ
描けた作品ばかりだ

私は彼の絵を見て思う
「あいつの自画像」だとは思わず
「自分の自画像」だと思える側で良かった


自由詩 他人の自画像 Copyright イオン 2025-11-29 11:01:36
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