試運転にはいい寒さだ
泡沫の僕
陽は少し高く登り、白さが緩み始める
まだ静かな住宅街を歩いていく
土手を登って見えるのは広く穏やかな河川だ。
「川と言えばこんな感じだろ?」
買い替えた自転車の試し乗りには遠すぎるサイクリング。
ここを通った時にあの人はそう言って笑った。
僕は坂道を登るので精一杯だったのに。
陽は陰り始め、影を長くさせた。
川面を眺める僕の後ろをいろんな人が通り過ぎる。
犬の散歩、ジョギング…親子のサイクリング。
そんな音があの日もあったはずだ。
結局隣県まで辿った道程は、爽やかな達成感をくれた。
「冒険ってこんな感じだろ?」
傾いた日の眩しさに目を細めて、
あの人はそう言って笑った。
息も絶え絶えな僕が呆れて言った言葉を、
今また小さく独り言ちた。
……これから、どうやって帰るんだよ。