光の王国
花野誉
彼女の好奇心と
私の虚しさを埋める
壮大な作り話
姫君の瞬き
傅く水晶の城
裏切りと慟哭
見知らぬ仲間は
命分けあう行く末
白いシーツの部屋は
異国の砂漠に変わり
闘い倒れた同志の血が
布を紅で染め上げる
彼女の問いは
私に道を知らせ
目覚めるごとに
藻掻き続ける
小さなその手は
蓮の蕾のようで
柔らかく温かい
彼女の涙は
胸に沁み込み
夜明けをもたらす
たとえ
もう戻れなくても
君が覚えてくれていたら
それでいい
それだけで私は
生きていたことになる──
彼女の涙と私の涙が
同じ意味で流れるとき
それは笑顔に結ばれて
物語は最終回
哀しまなくていい
寂しがらないでいい
懐かしく愛おしい子
君はそのまま大きくおなり
絆は永遠の泉
君は私の光
目を瞑れば
いつも傍に
――映画『落下の王国(The Fall)』に寄せて