光の王国
花野誉

彼女の好奇心と
私の虚しさを埋める
壮大な作り話

姫君の瞬き
傅く水晶の城
裏切りと慟哭
見知らぬ仲間は
命分けあう行く末

白いシーツの部屋は
異国の砂漠に変わり
闘い倒れた同志の血が
布を紅で染め上げる

彼女の問いは
私に道を知らせ
目覚めるごとに
藻掻き続ける

小さなその手は
蓮の蕾のようで
柔らかく温かい

彼女の涙は
胸に沁み込み
夜明けをもたらす

たとえ
もう戻れなくても
君が覚えてくれていたら
それでいい
それだけで私は
生きていたことになる──

彼女の涙と私の涙が
同じ意味で流れるとき
それは笑顔に結ばれて
物語は最終回

哀しまなくていい
寂しがらないでいい
懐かしく愛おしい子
君はそのまま大きくおなり

絆は永遠の泉
君は私の光
目を瞑れば 
いつも傍に





     ――映画『落下の王国(The Fall)』に寄せて








自由詩 光の王国 Copyright 花野誉 2025-11-23 11:03:01
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