吐息×2
ただのみきや

六十八匹の鈴虫を埋めた墓を
母の庭帚が一掃した
落ち葉をしだくような
笑い声に見合う顔を思い出せずにいる
まだ蝶結びができなかった


大雪を抱えた空の下
厚いコートにナイーブな獣を隠し
互いの白い息がとどかない
孤独な陽だまりから身動きできずにいた
時代遅れの服ばかり選んで


ひどい吹雪の日に
立ち止まりほほ笑んだ
すべて伝説や物語への扉はこころにあって
現実のどこにも出口はない
目をつむり耳をひらいて交わした抱擁


夏に売れ残った朝顔を
冬の窓辺で育てている
またたくように彩られ すぐに
瞑目し内に死を実らせる  日々
捲られる世界 いのちは羽毛より空を舞う


               (2025年11月23日)









自由詩 吐息×2 Copyright ただのみきや 2025-11-23 10:28:13
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