ひととき
花野誉
今夜も その笑顔に癒されている
カウンターで
コースターを弄りながら話す
目の前のグラスは
緑の照明にぼやけて滲んでいる
近すぎる席に感じるのは
貴方が大柄だからでしょうか
いつも なぜか
同じ夜に隣り合う
よく笑い 優しみのある子
温かい光が見えた
生まれは天草で
行ったことがないのに
懐かしい海が見えた
帰りは危ないから、と
何度目かの帰り道
池の畔で 脇道にそれる
きっと どこかで
胸の奥を少しギュッとされる
そんな日がくるんだろうと
ぼんやり思いつつ
今はこうして隣
その笑顔に癒されている