リアル・ウィークエンド
汐見ハル

日曜の朝のイメージは白
だったのは子ども時代の名残
めざめるとそこかしこに
ラメみたいに散る朝陽

 日曜日だけは
 がっこうの一時間めのじかんに
 テレビアニメをやっていて
 だからほんの少しおねぼうだけど
 寝過ごしたりしないでいられた

眠らない金曜の夜と
惰眠をむさぼる土曜の昼を経て
めざめるのがおっくうな日曜の朝
ほんとうの週末は窓の外にあり
レースのカーテンに透けている

 おでかけのやくそくをしていた
 おかあさんは
 ゆうべからこたつにもぐって
 眠ったままで
 ねえ起きてよって
 何度かゆすってみたけれど
 うーんってうなるばかりで起きてくれない

予定のない週末の惰眠は
痺れた腕、まぶたをもちあげる術を
おもいださなくてよくて
誰もいない週末のまどろみは
わたしがほんとうにひとりであることを
さみしくならない唯一の時間だ

 食パンを生のままでかじる
 耳だけは焼いたほうがおいしいけど
 おかあさんの寝息がきこえる
 あんまりきもちよさそうで
 だけどみけんにしわがよっている
 だから牛乳もあっためないで
 紙パックに口をつける

鉢植えのひとつも置かない白い部屋で
わたしだけがたしかに
呼吸をしていることの不思議と安堵
もうすこし、日が傾いたころに
人気ない住宅街を抜けて
灯台みたいに輝くカフェに
カプチーノでも飲みにいこうと
つめたくなった枕の感触を頬でたのしみながら
もう何度めかわからなくなった
ゆるい眠りにひきこまれてゆく






(初出:蘭の会(http://www.os.rim.or.jp/~orchid/
     2005年5月 月例詩集「週末」より。のちに改稿)


自由詩 リアル・ウィークエンド Copyright 汐見ハル 2005-06-03 01:30:41
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