コカ・コーラの氷の中にはちいさな罅が入っていて
本田憲嵩

透明なグラスに注がれたコカ・コーラには西陽が射し込んでいて、そのなかには幾つもの氷が沈み込んでいる、その一番上のものには幾つかのちいさな罅が入っていて、まるで浄土の影がわずかに映っているみたいに、その一か所がオレンジ色がかった虹色に煌めいている。あるいは、傷つけ傷ついたからこそ光ることのできる寂しさか。そんな傷の融け込んでいる冷たいコカ・コーラを飲み干しながら、この黄昏の光のなかで、あなたへの手紙をスマートフォンで読みかえす。
やがて外に出る、ガチガチに寒い。けれども自販機の前で五円玉を拾う。翌々日、着信音が鳴った――。



自由詩 コカ・コーラの氷の中にはちいさな罅が入っていて Copyright 本田憲嵩 2025-11-09 22:44:55
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