西日の水晶
花野誉


窓の外には
まだ黄緑のイチョウ
西日に照らされて キラキラ光る

その光を受け
陰影をまとい輝く
窓辺に並べられた白い陶器たち

ほとんど目が見えなくても
こんな繊細な作品を生み出せるのだ
どうやったら作れるのかと
じっと眺めていたら

ぽつんと一つ
白い石のようなそれ──
親指大の白い雫

いや、ちがう
藍色のリボンが結ばれた水晶

説明書きには
「丹念に、丹念に
心を込め
時間をかけて磨いた」
とある

思わず触れたくなる
女神の肌のような水晶

きっと触れれば伝わる
彼の指先とその体温が

西日の中に浮かぶ
光る雫には
愛おしさと喜びが
静かに満ちている









自由詩 西日の水晶 Copyright 花野誉 2025-11-04 16:06:06
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