晩秋の綿毛
本田憲嵩
綿毛、その種、
ほとんど重さのない、
雪のしたの土のなかでも、春へと耐えしのぶ、
石ではない、ちいさな有機の礎、
晩秋のくもり空の下、
とてもめずらしい、
綿毛のタンポポが、白い球体のまま一輪だけ、
そのかたちを未だ留めている、
けれども、いずれ強い風が吹いて、
――ふと視線をうつせば、
白い頭髪の老婆が、
黄色い通園帽をかぶった女児を連れて、むこう側へと歩いてゆく――
そのように、未来(つぎ)へと繋いで、
自由詩
晩秋の綿毛
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本田憲嵩
2025-11-03 00:43:00
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