万霊節の夜
月乃 猫


万霊節の夜
 名残りの夏の 季節の扉をしめる今宵
 ここはいずこも
 森の精霊の異形の獣たちに
 あふれ
 さまよう


 Trick or treat
  Trick or treat

訪れる
 夜の徘徊者に 施しの糧は器にもられ
 リスたちには クルミを
 山鳩たちには 麦を
 鹿たちに ブルーベリーを
 山鼠に ほしブドウ
 
ジャコランタンのかぼちゃの灯りに
 影のない 生きものらしきものの 気配が
 忍び寄る鳴き声を響かせ、
 やってくる

黒猫のむすめは、
 扉の向こうのわずかな音に
 尖った耳を欹て
 誰にも平等に
 収穫を分け与える

一夜 この世をゆるされた
 月のない森、獣たちの夜宴に
 いつか
 魔女ごとき 女も招待に
 喜びの夜を共に
 祝い

はらぺこの 灰色熊のみ
舌なめずりの、

 Treat or you are my treat.
  Treat or you are my treat.

いつか
 精霊たちは消え去り
 朝陽のなかに つめたい森の冬が 
 静かにめざめる






自由詩 万霊節の夜 Copyright 月乃 猫 2025-11-01 15:12:18
notebook Home