無常戦争2
本田憲嵩
朝、西の港にちかい道路で白いセンターラインから少しだけずれて、一羽のカモメがその羽を閉じながら蹲っている。前方に何台か続いている自動車がほんのすこしだけハンドルを切りながらそれを避けてゆく。寿命なのかそれとも怪我なのか。それはどこか敗れた兵士の死に際のようにも思えて――。
(あるいは蒲団の中でいつまでも丸まって起床することの出来ない社会人なのか。そんな社会人をおなじ社会人がなんだか避けていってるみたいで)。
夕方の仕事帰り、同じ道路を辿ったが、そのカモメはもう既にそこにはいなかった。そんな社会人のような無常。――17時を知らせるドヴォルザークの『家路』がモノラルに鳴りひびく。