食物連鎖の同人誌
イオン

突然の電話で私の詩を褒めちぎる
たまたま同人誌への掲載作品を読んで
ここがこう素晴らしくて感動しましたと

その批評は見事で褒められて嬉しくて
こちらもデレッとしてしたところで
この詩を多くの方に知ってほしいから
兵庫県立美術館で展覧会を開くので
そこに詩を展示しませんかとのお誘い

画家が詩からイメージしたイラストを
描きおろしてそこに詩を添え入れる
世界にひとつだけの文芸アート作品を
A2サイズの大きさでとのお誘い

有名な美術館なので集客力もあります
ただし会場費用もかかるので
十二万円のご負担を頂けないかとのこと

いやぁと渋ると
アート作品をポストカードにして
百円で販売した全額を
慈善団体に寄付すると良心をくすぐり
心がよろめいた

しかし展覧会の後は
一点物のアート作品を贈呈すると言われ
その後に全国で数か所での展示が続くなら
高くはないなと皮算用した気持ちが覚めた

東北在住なので
関西だと知人を招待できないし
自分も見にいけないからと断ると
三ヵ月後に仙台で展覧会はあるが
もう間に合わないので半年後に
松島の瑞巌寺でお盆に文芸作品を書いた
アート作品の展覧会に十二万円でとのこと

格調高い盆に笑いを誘う詩は似合わない
ここで商売ありきと判明したので
電話を切らせて頂いた

同人誌が業者の餌になっていたのだ
褒めちぎられてよろめく人もいるだろう
良くも悪くも商売になる作品だと
思われたことは確かだし

また電話がかかってきた
上司とかけあって三ヵ月後の仙台での展覧会に
無理を言って展示できるようになったと
無理してあげた感が強いが
その熱意は私のためか商売のためかわからない
考えてみますと電話を切って
考えてみて着信拒否にした

アートで食べることができない人を相手に
アートで食べる人がいる
食物連鎖の同人誌


自由詩 食物連鎖の同人誌 Copyright イオン 2025-10-25 11:47:16
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