夜想曲
りつ
とても静かな夜だから
閉じ込めた想いを少しだけ開いて
小さな声で歌おう
伸びやかに広がっていくアルトは
小鳥が囀ずるようなソプラノではない
ヴィオラの音色に合わせて
傷を負った白鳥は
尚も翔ぼうとする
片翼だけとなり
舞い上がれずとも
精一杯の羽ばたきで
今際の際にも
翔ぼうとする
それが本能のなせる業ならば
私も綴ろう
死の谷を歩めば
その風景を
いのちに微笑むなら
生きる喜びを
絶望を希望を
哀しみを怒りを
こころが動くままに
あなたを愛してるのかと問えば
顔には不思議な笑みが浮かぶ
困ったような面白がるような
無邪気に愛を告げられなくなった私は
大人になったのだろうか
未だに何故
あなたが好きなのか分からない
それでも
想う気持ちに偽りはなく
夜に祈る
幸せであれと
ただ祈る
傷だらけのあなたへと夜想曲