あわいの手
花野誉
白くて水をたっぷり含んだような手
節の見えない長めの指
綺麗な淡色のマニキュア
カウンターに置かれたそれは
何か美しい生き物のように魅惑的で
コツコツと爪音立てて上下するたび
見つめてしまう
赤ちゃんがそのまま大きくなったような
手の甲のへこみに
幼さと成熟のあわいを見る
その柔い手を
優しく包む人がいるのも知っている
幼い時分の貴女と今の貴女
まるで別人かのように見える
時折、遠くに感じてしまう
それでも
その手の甲のへこみが
私を安心させる
まちがいなく
この手は
私の娘のものなんだと