秋無月
月乃 猫
素直さのない
夏の熱砂が残す灰、夜想曲の静かさで
降り積もる
森は、夏の温もりになごり
いつか 一つの季節を追いやる
季節風は海の果てに姿をけし
かけ違えられた犠牲の森の彩
見捨てられたように 色を変えず
痛みは、季節の伽藍を焦土の色にした
蝉の撓んだ夏の残響、
それさえも いつまでも鳴りやまず
もしも
あきらめることのない
温(かい)暖(かい)化の
薄いその重層化されたわけをみつめ
帰りたいあの時へ、
見落とし 見ないようにしてきた
降り落としてきたもの、
叶わない この時を支えてきたものを想う
守りたいものは、いつも手の中を
すり抜けてしまい
いつまでも
いつまでも 悔やみつづけ
責めることもできないこの世界に
猫の 環境を探る耳の動きで、
その動きのごとく
私にできる
わずかに残された
希望のしずく、清らかな柔らかな水が、
この灰を流しさり
忘れ去られていく かけがえのない秋を
未来に消してしまわないように
四季はいつか二季へと
紅葉のない枯葉が 「秋」の主役になり
ツメタイ冬へと
スキップしてしまわないように