移ろい
りつ

孤独を渡る夜の鳥よ
虚しい私のこころを
一緒に連れていってはくれまいか
白く羽撃く翼も
闇夜の中ではくぐもって
うっすら夜に溶け込むよう

ひとのたましいは
死んだらどこに行くのか
おまえは知っているのだろうか
ここではない何処かに行きたくて
靴の踵を三度鳴らす

慌ただしく日々が移ろう中
記憶だけがまだ鮮やかで
変わらぬものは何もないというのに
すれ違う見知らぬひとに
あなたの面影を探してしまう

夜の鳥は鳴くこともなく
静かに密やかに
滑空してゆく

あなたの声が聴こえた気がして
振り返った私に
今年初めての金木犀が
柔らかにふわりと馨った
あなたが好きだと言った香りだった


自由詩 移ろい Copyright りつ 2025-10-14 19:54:55
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