移ろい
りつ
孤独を渡る夜の鳥よ
虚しい私のこころを
一緒に連れていってはくれまいか
白く羽撃く翼も
闇夜の中ではくぐもって
うっすら夜に溶け込むよう
ひとのたましいは
死んだらどこに行くのか
おまえは知っているのだろうか
ここではない何処かに行きたくて
靴の踵を三度鳴らす
慌ただしく日々が移ろう中
記憶だけがまだ鮮やかで
変わらぬものは何もないというのに
すれ違う見知らぬひとに
あなたの面影を探してしまう
夜の鳥は鳴くこともなく
静かに密やかに
滑空してゆく
あなたの声が聴こえた気がして
振り返った私に
今年初めての金木犀が
柔らかにふわりと馨った
あなたが好きだと言った香りだった