DOUTORにて
花形新次

土埃でぼやけた景色しか
記憶になかったのは
遠い昔のことで
今では高層ビルが建ち並び
リニア新幹線の工事をしている

朧げながら
僕にも未来があった
孤独であっても
それが支えだった

いつの頃からか
人並みの生活を送りたい
と思ってから
僕は随分と窮屈な世界に
押し込まれるようになった

しかし、平凡であること
中庸であることが
正しいと信じて来たことに
間違いはなかったと思っている

そうやって
星の数を超える人達が
過ぎて行ったのだ

アイスアメリカーノを飲みながら
ラジオ日経で競馬中継を聞く

ああ、またコントレイルの仔が負けた




自由詩 DOUTORにて Copyright 花形新次 2025-10-12 17:03:03
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