余白
たもつ
平日の遊園地は
あなたの名前なのに
石鹸の金魚は泡になった
トウキビのような匂い
私小説ばかり書いている友人が
家に遊びに来たことがある
余白はどうしているのか聞くと
その問には答えず
友人は余白を作り続けていた
雨が降り始める日の
前日のことだった
あなたと出会う
ずっと前のことだった
観覧車のゴンドラが
目の前の停留所にとまる
指先が触れそうになり
慌てて係の人にお辞儀をすると
景色は少し湾曲して見えた
売店のキャンディーが
徐々に色づいていく
閉園時間が過ぎれば
遊園地もまた
泡みたいに終わる
家族のような人たちが
小さな乗り物に手を振っている
行くあてもないはずなのに
いつまでも振っている