余白
たもつ



平日の遊園地は
あなたの名前なのに
石鹸の金魚は泡になった

トウキビのような匂い
私小説ばかり書いている友人が
家に遊びに来たことがある
余白はどうしているのか聞くと
その問には答えず
友人は余白を作り続けていた
雨が降り始める日の
前日のことだった
あなたと出会う
ずっと前のことだった

観覧車のゴンドラが
目の前の停留所にとまる
指先が触れそうになり
慌てて係の人にお辞儀をすると
景色は少し湾曲して見えた

売店のキャンディーが
徐々に色づいていく
閉園時間が過ぎれば
遊園地もまた
泡みたいに終わる
家族のような人たちが
小さな乗り物に手を振っている
行くあてもないはずなのに
いつまでも振っている



自由詩 余白 Copyright たもつ 2025-10-11 06:35:04
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