さざんか
りつ

スクランブル交差点で
靴がかたっぽ脱げたから
たぶん明日は雨だろう

街は歩く速度で遠ざかってゆく
小路の影は濃いままに

分かっている
あなたが視ているのも
想っているのも
私じゃない
それでも寄り添いたいと願うのを
罪なことだと断罪しますか

ひとりだけの夜
あなたの声に抱かれたい
それを馬鹿だと笑いますか

夕方4時30分の
防災無線のメロディは
“ふるさと”
風もないのに
さざんかが一輪ポトリと落ちた
花のかたちもそのままに


私もあなたへ落ちていきたい


さざんかの如く
ひとに踏まれ
泥にまみれるとしても


自由詩 さざんか Copyright りつ 2025-10-08 21:05:03
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