あさの電車
リリー
二両編成の電車は定時を守り
JRに乗り継げる駅で吐き出される乗客
足を踏み入れる車両には
見知り顔の人もいる
まばらな空席のあるロングシートで
深く腰を預ける彼らはただ目をとじている
そのほかには、どんな在り方も
あり得ないのだろう
日の差す秋ぞらの下、
夜の雨があがった鉄道草のすがすがしい緑
そのところどころで
連火の様な彼岸花が咲いている
線路わきの真赤な花に
気持ちはきりりと張りつめたりする
今年も三ヶ月を残すだけだ
新しい年になって何か変わっただろうか
去年も同じようなことを思った
一日ごと積み重なってゆく
新しい過去が今日も
それは静かな音で白い泡と一緒に回る
洗濯機のようでありたい
洗濯物が多いとひっかかったり
もつれたりして回転もしないから
いくつか停車駅を過ぎて行くと
ドア付近へ立つ人はいても
つかんでもらえる手のなくなって
そこにあることの所在無さげな吊り革が、
規則正しいテンポで揺れている