いつか踊れる日のために
健
なんとなく
の生き辛さが
ここのところ毎日のように降っているなと思っていたら
とうとう玄関先にうっすらと積もり始めた
なんとなく
踏みしめてはいけないような気がして
おそるおそる
ぐるっと迂回するようにして家を出る
重い足取りが
なんだかんだでリズムを生み始め
バスに乗り込むころには
不思議となんとかなるような気がしてくる
すれ違う人の顔を
なるべく見ないようにしながら
明るい挨拶だけはかかさずに
一日を歩いていく
+
なんとなく
明日が近づいてくるのを感じて
仕方なく帰りのバスに乗る
窓の外へ視線を向けると
なんとなくのそれは
降っているのか止んでいるのか
よくわからない曖昧な態度で
降るなら降れよと
大きな声を投げつけたくなってしまう
+
見えてきた玄関先は
朝よりも少しだけ高くなった気がする
蹴り飛ばそうか迷いながらも
結局は逃げるようにして
室内と潜り込んでいく
+
多分今から夢を見るだろう
なんとなくのそれが
積もり続けてドアをふさぎ
家から出られなくなる夢だ
それはとてもおそろしい夢で
この先何度となく繰り返し見ることになる
降り積もったそれはもう溶けることは無いし
あんしんはもう帰ってきてくれやしない
窓の外からは
肌寒い静けさが聞こえてくる
+
明日起きたら
玄関先でダンスを踊ろう
夢を見た その後でなら
それができるような気がする
多分この気持ちも
朝には消えてなくなってしまうと
冷静な頭は考える
けれど今は
なんとなく
できるような気がするから
まだわたしは 眠ることができる
また今日も 眠ることができる
息の辛さを感じることができる
+
おやすみなさいを明るく言って
わたしは目を閉じる
明日へと向かう