淡淡(あわあわ)
本田憲嵩

淡淡(あわあわ)。たばねた頭のてっぺんに今まさにのせている、その小さな雪だるま。それをつねに片手でおさえながら、淡いくりーむ色の肩と細ながい腕を露わにして、露天風呂に浸かっている。けれどもその小さな頭にはじつは顔がない、表情がない。だから、まるで座している彼女の丸顔に転移するかのように、そのとっても人のよさそうな淡い笑顔。そのすこし下がった眉のしたに、ふたつの三日月をつくりながら。なんだか頭上の本体よりもいち早く融けていってしまいそう。そんな北国での憩い。風雪がいくつもの白い流星のように観測されて、淡いアクアマリン色の御湯のなかに融けてゆく、融けてゆく。
そんな写真集の中の、きわめて印象的なワンショットがある。



自由詩 淡淡(あわあわ) Copyright 本田憲嵩 2025-10-01 22:06:14
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