イタコ保険
イオン
「はい、当社は青森県の恐山にあります
従業員約三十人のまだ小さい保険会社です」
「そうですか、だいたい話はわかりました
つまり、私が死んだ後でも
遺言ができるという保険ですね?」
「そういうことです
ただし、財産相続などではなく
相手への感謝や恨みだったり
やり残した事への指示などの
言葉の遺言に限ります」
「そうですか、確かに
遺言と言うと財産分与しか
思い浮かばなかったけど
それは生前に書き残して託せますからね
確かに死の直近のことは書き残せないですね」
「三途の川を渡る前に
イタコからあなた様にアクセスをしますので
そこで、伝えたいことを言って下さい
霊媒との交信記録を文書にして遺族に届けます
詳しくはご契約後になります」
「そうですか、でも人は死んだら一切この世に
かかわれないからこそ良いのではないですか?
死んでも忘れるなよとか
そういう言葉で生きている人間を
縛ることになりませんか?」
「そう思う方は入らなければいいだけです
ただね、誰かにはめらた、殺されたなどの
事件の真相も伝える事ができるので
敵が多い人が紹介されて契約しています」
「そうですか、確かに私も敵が多いかな」
「死人に口なしではないというのは
最大の防御で、画期的な保険なんです」
「わかりました、入会します」
「ありがとうございます
それではこちらにサインをお願いします」
「あれ、この遺言の著作権は
当社に帰属とは何ですか?」
「この遺言は行政書士とかが入らないので
気に入らないと書き直しても罪になりません
なので、著作権侵害で縛ります」
「そうですか、いろいろ考えられてますね
だから、こんなに高額なんですかね」
「いや、それはもうイタコの数が少ないからです
明治初期には五百人ぐらいたらしいのですが
今や数人で、とてもさばききれないんです」
「そうですか、それで紹介制のみなのですね」
「しかも金額のハードルを上げさせてもらっています
そしていずれは頂いた利益で
イタコの育成施設を作って数を増やして
事業規模を拡大しようとしています」
「そうですか、楽しみですね」