鏡の盲女
ただのみきや
ぬれた土におわせて
立つ光 単衣透かし
いたむ秋桜や朝顔に
掛ける眼差し
千代紙を破るよう
縫い閉ざされた叫びに
こころ添わせてしまうなら
もう
恋でいい
つめたい火に炙られながら
痛点も見定められず
ああ人のように歩きまわる
秋に中てられて
瞳に映り
脳裏に灯る
花はこの瞳の前に立って
映る己を見ることはなく
太陽の視線と風の愛撫
虫たちの苛めにより
己の中に
己の像を抱く
ひとつの歌声として
かぼそく
揺らぎのない
ことばによらない意味を秘め
あざやかに
色と形をこわして見せる
失ってこそ極まる
美の本質が幻影であると
黙秘したまま
このたましいを楽器と変え
激しく弦を打つ
鳴らぬ空ろの中でいま
沈黙が四肢を生やす
(2025年9月27日)