眠りのなかの眠り
塔野夏子
霧のような薄灰色の帳の中
薄灰色の褥
脱ぎ捨てられた色とりどりの
アルルカンの衣装
眠りたい
(僕が)
(君が)
(誰が)
眠らせたい
(僕を)
(君を)
(誰を)
あまりにも語られすぎた
物語の頁は
砂のように崩れ風に吹きさらわれていった
そして語られることのなかった
数多の幻滅は
彼方の空で
まるで黄昏の美しいグラデーション
眠りなさい
と
囁く声
(僕の)
(君の)
(誰の)
薄灰色の褥は
火照りすぎてきた肌を
ひんやりと包む
身を委ねれば
自らの鼓動と呼吸とが
なつかしくはるかなララバイ
眠ろう
(僕も)
(君も)
(誰も)
深く眠るほどに
脱ぎ捨てられたアルルカンの衣装が
ゆっくりと 色を失くしてゆく