メイクアップ 
リリー

 汗で化粧が禿げてしまうから
 簡単に済ませていた夏
 だから秋は丁寧にメイクする

 朝の気怠さで
 まだ曖昧な輪郭の私は
 鏡に映る私という存在と
 ゆっくり呼吸を合わせていく

 この静かで少し緊張する時間
 いつもと変わらない顔に
 (さあ、今日も一日!)と
 ヤル気をこめる
 美人でなくてもそれだけで
 年齢相応にきれいになれる

 「若い頃の顔を捨てる」
 ということは、人生での脱皮の様なもの
 いつも物語から
 ぬけだすことのできない顔
 涙のシミ痕やしわくちゃになった
 ページもあるだろう

 それらの滲みでる顔を
 そこそこ退屈しない展開で
 生かされていく
 ストーリーの運びがメイクかもしれない
 
 決して白紙にはなれない
 自分の笑顔に
 化粧せず自信が持てる
 そんな女性の魅力は、いかにも尊い
 


自由詩 メイクアップ  Copyright リリー 2025-09-23 14:44:34
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