メイクアップ
リリー
汗で化粧が禿げてしまうから
簡単に済ませていた夏
だから秋は丁寧にメイクする
朝の気怠さで
まだ曖昧な輪郭の私は
鏡に映る私という存在と
ゆっくり呼吸を合わせていく
この静かで少し緊張する時間
いつもと変わらない顔に
(さあ、今日も一日!)と
ヤル気をこめる
美人でなくてもそれだけで
年齢相応にきれいになれる
「若い頃の顔を捨てる」
ということは、人生での脱皮の様なもの
いつも物語から
ぬけだすことのできない顔
涙のシミ痕やしわくちゃになった
ページもあるだろう
それらの滲みでる顔を
そこそこ退屈しない展開で
生かされていく
ストーリーの運びがメイクかもしれない
決して白紙にはなれない
自分の笑顔に
化粧せず自信が持てる
そんな女性の魅力は、いかにも尊い