秋影
花野誉
秋風が記憶を連れてくる
夢の中の貴方を手離し難く
朝の寝床から起きあがれなくなる
福島駅で別れてから
毎秋そう
別れを告げたのは私だけれど
きっと神様が私を
貴方から遠ざけたのだと思う
千里セルシーが無くなったこと
どうか
貴方が知りませんように
旅から帰る、
貴方を待ち伏せ
私を見つけ
驚き満面の笑顔
それを見て満たされる私
昭和の発展を教えてくれる
幾何学模様の建物
森の空気を纏った場所
貴方を待つ時間が好きで
この場所が好きになった
貴方の純粋な心根
秋の香りは貴方の香り
私が宙に召されても
貴方の宙には
行かせてもらえない気がする
それでも
こんな時
貴方はどうするだろう
貴方はどう言うだろう
それを考えて行動する
少しでも
貴方のようになりたくて
あの場所が消えたこと
貴方が気づきませんように
あの時の私を
思いださないでいてほしいから