アズライール
りつ

雨の降らない砂漠に雪が降る
それは哀しみか慈しみか
生まれたばかりの天使の雛から
抜け落ちた羽毛だろうか

いっときのなぐさめなんて
すぐに渇いてしまうとしても
いま、この、
奇跡の瞬間だけは
とても幸せだ

死なないで
とも
生きてください
とも言えないわがままを
私は知ってた

父の今際の際に聴こえた
「すまんなあ、もう疲れたんや、すまんなあ」
それが私の妄想だとしても
母や姉が父に頑張って、お姉ちゃんが来るまで、頑張って、
と必死に呼び掛ける中
私は真逆のことを言った

お父さん、もういいよ、もう頑張らんでいい、ラクになりや。

そう呼び掛けた10分後
父は姉を待たずに逝った

すまんなあ、

詫びながら。


あなたに生きてくださいという残酷さも
あなたがいない世界で生きてゆく強さも
ないのなら、

せめて一緒にお供させてくれませんか


それすらも
あなたの枷となるのなら
生きている間あなたをたくさん笑わせます

私の涙の熱さよ
どうか天に昇り雪となり
一瞬だけの夢をみさせて

共に生きていく砂漠の蜃気楼のような幻を


自由詩 アズライール Copyright りつ 2025-09-20 00:22:58
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