アズライール
りつ
雨の降らない砂漠に雪が降る
それは哀しみか慈しみか
生まれたばかりの天使の雛から
抜け落ちた羽毛だろうか
いっときのなぐさめなんて
すぐに渇いてしまうとしても
いま、この、
奇跡の瞬間だけは
とても幸せだ
死なないで
とも
生きてください
とも言えないわがままを
私は知ってた
父の今際の際に聴こえた
「すまんなあ、もう疲れたんや、すまんなあ」
それが私の妄想だとしても
母や姉が父に頑張って、お姉ちゃんが来るまで、頑張って、
と必死に呼び掛ける中
私は真逆のことを言った
お父さん、もういいよ、もう頑張らんでいい、ラクになりや。
そう呼び掛けた10分後
父は姉を待たずに逝った
すまんなあ、
と
詫びながら。
あなたに生きてくださいという残酷さも
あなたがいない世界で生きてゆく強さも
ないのなら、
せめて一緒にお供させてくれませんか
それすらも
あなたの枷となるのなら
生きている間あなたをたくさん笑わせます
私の涙の熱さよ
どうか天に昇り雪となり
一瞬だけの夢をみさせて
共に生きていく砂漠の蜃気楼のような幻を