メモ(日記)
はるな
あー、ねえ、いくつもの川を渡った。昼間にも、夜中にも、明けがたにも。きみの50歩が、僕の42歩。少しずつ齧るようにして日々。こんなのはもうさんざん使いまわされて流行おくれだってわかってても跳びあがる。大事な言葉があったから生きてこれた。
人のやりかたを妬まない。なにひとつ盗めない。涙が出たら植物にも水を遣って、どんなに眠たくてもむすめに朝日を振りかける。お湯を沸かして。ビルやコンクリートについて書いて。上澄みを掬って、それはぜんぶ捨ててしまう。必要のないときには、目を閉じる。感想を伝えなきゃならないけど、なかなか言葉にできない。仕入れてきた花に水を吸わせて、すみやかに生けていく。
花たち、いつでも、わたしの思惑とは関係なしに美しい。ばらの棘を折りながらごめんねと思うけど、それさえも跳ねのけてちゃんと美しい。咲かないときも、美しい。かたくつぼんだままで朽ちていくこと。ありがとうね、それで、おわりなのが、とてもいい。
詩はほんとうに自分に近いものだから、めりめり剥がさなきゃならないよ。川と川辺みたいに。雨が降るでしょう。そのとき溢れるのが、自分だか詩だか、ちゃんとわからないといけない。
人のやりかたを妬まない。どんなに傷つきたくても、そうしない。混ぜない、混ざらない。でも、悲しみを悲しもうね、いいよ、小さな子どもを飼っても。「心の中は自由ですもの」とカウンセラーが言っていた。無論知っている、じゅうじゅう知っている、しかし許されないだけです、いまのところは。
くまたちの詩を書こう、湖の絵を描こう。もう物語のなかに遊べないから、他のやりかたで川を渡る。そしてきっと川を作ろうと思う、野ばらだらけの広い川をつくって、そのなかに建てるビル群、に住まわせるくまたちと小さな子ども、跳びあがる、そのとき溢れるのが、自分だか詩だか、ちゃんとわからないといけない。