メモⅳ
道草次郎
「少年のころ」
少年のころ道草をよく くって帰ったものだ
冷凍食品工場があった
友達のおかあさんが勤めていた
意味もなくいやで まわり道した
子供らしい体温で
大人のにおいをするどく嗅ぎつけては 分度器に触れた
(大人になりたくなくて
子供のままでいたくもなくて)
思いのほか湿潤な八月の末
湾岸戦争がはじまった
「死ぬ」 それがこわくて仕方なかった
「祈り」
ですけれど
夜になると
夜のかたちの考えかたをしはじめる
それが人間
わたしの実験はしめしあわせた形を取りつつ
はじまるのです
その人のしあわせと健康をいのろうとすると
わたしは
わたしのなかのどす黒いものをみるのです
わたしは
わたしのなかのあの人を刺します
わたしは
わたしのなかのあの人の断末魔のひとみにうつったおぞましいわたしをみます
そのようにして
わたしはわたしの実験をおえ
眠りの世界へいくのです
これらぜんたいを
わたしは
祈り と呼ぶ
「どのように」
どのように書けば良いか分からない何を書けばよいかも判らない
仕事へ行かなきゃならないとうっすら考えている
私はどんどんどんどん紛れもない人間になっていく気がする